中澤系歌集uta0001.txt(新刻版) 中澤系

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ずっと欲しかった歌集。一度双風社から新刻版が出ていたのですが、すぐ売り切れてしまい入手できなくなっていました。2018年3月に皓星社から再度刊行されたもので、今回はたくさん出ているようで梅田蔦屋書店にあった。

 

 

中澤系の歌は全部つらい。痛い。生きるのもつらい、死ぬのも嫌だ、ひたすらそういう短歌です。時にはその姿が青すぎる、若すぎるようにも痛々しくも見えるんだけど、でも自分自身が本当につらかったときに支えになってくれた。その思い出を本の形で持っていたくて買いました。

短歌そのものはtwitterで自動でランダムに投稿される半公式のアカウントがあり、常に読むことができます。その機械化された感じすら中澤系らしく、情緒があるんだよな。

 

最近は少しでも暗くなったりつらそうにしたり青臭かったりするとすぐ中二病とか黒歴史とかメンヘラとか言われて、やわらかい傷つきやすい年頃にすら人前で病んでる姿をさらすことが難しくなってるなと感じますが、病めばいいじゃん、やればいいじゃん中二病。残していけよ黒歴史。そういう時期が人生にはある、みっともなく見えるし、人にも迷惑かけるかもしんないけど、それをこえてこそ大人になるのにな。そんな人にこの歌集が届くといいよねと思います。

 

中澤系歌集 uta0001.txt

中澤系歌集 uta0001.txt

 

 

 

発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術 借金玉

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Twitterで見かけたので購入。もともとこの方のpostはちょっと攻撃的で苦手なんですが、うつ関係ライフハックには参考になりそうなものもあって、その辺まとめた著書なので読んでみました。

本当に生きづらい特性のある人間が基本的にまず生活をするにはどう工夫したらいいか、最低限朝起きて身支度して仕事に行って問題なく業務をこなし帰ってくるにはどうしたらいいんだ!?!!について当事者が冷静に整理してくれている。当事者で、落ち着いていて、それなりに生活が成立していて、その方法をシェアできる人というのはかなり貴重だと思う。実録うつ体験まんがとかもう完治した人のまんがとかは正直飽きたんだよ、今生きづらい人間がそれでも生きるにはどうすればいいか誰か教えてくれ、と常々思っていたので、こういう本が必要。

 

私は別に発達障害ではないので、過集中とか先延ばし感とかものがすぐなくなるとかはわからないんだけど、ものが整頓できない、部屋がごちゃごちゃになってしまう、気持ちの落ち込みを経験している、などの部分はけっこう わかるな〜〜 と思った。朝起きるには!!!!から書いてあるの、まずこれができないことを責めずに解決しようとしてくれてやさしいな…。

いちばん わ、わかる となったのは茶番センサーのところで、「こういうのは茶番だ、もっと誠実に、絶対的な正義にしたがいたい」みたいな変な正義感の強さが出てしまい、円滑なコミュニケーションのためのちょっとした虚飾や適当な相槌や嘘をぜんぶ切り捨ててしまうので人間関係など諸々うまくいかなくなってるというのは身に覚えがありすぎる。これが強まるとASDの空気が読めないというのになるんだな。発達障害と正常発達の人間の間にもグラデーションがあって、自分もその中にいるんだなということに気付かされたし、別に病名ついてなくても生きづらさを解消する手段をこうして見つけてる人がいたら、みんなでどんどん真似させてもらおうと思った。

 

本当はうつとか発達障害とかある人が社会の中に普通に混じっていて、それを申告したら仕事が休みやすくなるとかあればいいんだろうけど、今は世の中こどもや妊婦さんやお年寄りにすらやさしくしなよと言うだけでみんなギャーッと怒ってしまうような空気になってる中で、こういう病気なんで配慮してくださーいなんてとてもおそろしくて言い出せない。やっぱりそういう本人がこういう工夫しながら普通の人にできるだけ擬態して生きるしかないことにちょっとやるせなさも感じます。工夫でしのげる範囲なら本人が頑張るのは必要だけど、周囲にもこう、許容の余裕があったらいいのにねえ。

 

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術

 

 

 

独断と偏見の夏の100冊

夏といえば文庫100冊フェア!

ということで私も手持ちの本から勝手に100冊選びました。

 

 

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選考基準は、

・夏らしいこと(かならずしも夏が舞台でなくてもよい)

・私が読んで楽しく人に勧めたいこと

・できるだけ入手しやすいこと(夏の旅先とかで買える)

・携帯しやすいこと(基本的に文庫本)

・作家1人につき1冊まで

です!結果的に私のオールタイムベストみたいになってきましたが、おもしろいのでみんなも勝手にやってほしい。

#独断と偏見の夏の100冊

 

負け犬の遠吠え 酒井順子

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独身女の聖典、負け犬!

これまで、くすぶれ!モテない系(能町みね子)、貴様いつまで女子でいるつもりだ問題(ジェーン・スー)、嫁に行くつもりじゃなかった(岡田育)など、独身女本はいろいろ読んではきたのだが、これだけはあまりに「圧」が強すぎて逆に読めない…みたいになっていた。でも出版から15年経ち、当時女子高校生だった自分が31歳になったところで読んでみることに。

 

おもしろい。わかる。めちゃくちゃわかる。のですが、出てくる負け犬(独身・子供なし女性のこと)が全員あまりにレベルが高い。みな経済力、仕事能力、容姿、高級な趣味があり、男にもモテる。でも結婚してないからそれだけで「負け」ていると揶揄される。金も仕事も顔も彼氏もあるのにダメなの!?!??!!?!では全部ない私は一体なんなのかと、読みながら負け犬にすら負けた気持ちになってしまい、かなりつらい。

でもそれだけ当時(15年前)は結婚しない女への圧力があったんだなと思う。これだけいろいろ持ってる女の人でも結婚してるしてないだけで大きく立場が変わる時代だったんだな。

2018年現在では、負け犬は全体的に下流化したというか、経済力なし、仕事も非正規(就職氷河期)、容姿特によくない、高級趣味の余裕なし、未婚、子なしみたいになっている気がするのですが(自分がそうだからです)……

 

いちばんいいなあと思ったのは「オスの負け犬」の章で、要は結婚しない女が増えているなら結婚しない男も増えている、その男たちはどうなんだよという話です。結婚は女の問題にされがちですが、ここで男についてビシッと言ってくれてあり、かなり溜飲が下がった。

全体として辛口な批評はあるものの、負け犬への愛に溢れていて、やさしい本でした。

 

この「負け犬の遠吠え」の時の負け犬たちは、今は50代になっているのだが、みんなどう暮らしてきたのだろう。とりあえず筆者の酒井さんご自身は未婚でおられるようで、この後もずっと負け犬をタイトルに入れたエッセイ本を出し続けているので、年代順に読みたい。

私自身が結婚したいかどうかも、いよいよわからなくなってきています。本を読んで考えよう〜とかやっているから未婚なんだろうな!!!!わはは。

 

負け犬の遠吠え

負け犬の遠吠え

 

 




「思春期を考える」ことについて 中井久夫

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私の読書テーマに「障害や病気を抱えたまま生きていくにはどうすればいいか」というのがあり、特に精神医学分野が好きだ。一般向けの病気の解説本、患者向けの本、手に入れば専門家向けの教科書、患者の体験談、医師のエッセイなどいろいろ読む。推し精神科医野村総一郎斎藤環、そして中井久夫です。

 

中井久夫は「こんなとき私はどうしてきたか」がとにかく名著なのですが(ケアをひらくシリーズは最高!!!!!)、それで独特の文体と世界観に参ってしまい、以来ちくま学芸文庫中井久夫コレクションを少しずつ読んでいる。

こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)

こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)

 

中井久夫コレクションはだいたいどれもタイトルとあまり関連性はなくて、「思春期を考えること」について では思春期の話から始まって、サラリーマン労働と精神疾患の話、軽症うつ、海外と日本の精神科医療の比較の話、統合失調症論などにうつり、最終的には精神科医の個人史の話になっています。公演や寄稿の集まりなのでわりと散漫だし、最後の方は専門的すぎてまったくなにもわからない。

ただところどころにハッとすることばがスッといれこまれてあり、12歳くらいまでは身体のことばがある(ストレスでぜんそくとか)のに13〜15歳くらいはそれもなくて、でもまだ自分の感じてることの言語化もできないから妄想すら出ない空白の歳であるとか、精神科に限っては治療の期間を自由に短縮できると思われがちだがそんなことはなくて骨折などと同じように一定の時間がかかるとか、患者は非常に細かい診察の様子を覚えていてささいな一言をこちらが恥ずかしくなるほど感謝されることがあるとか、なるほどな〜〜〜!!と実感をもって読んだ。

 

中井久夫のキラーフレーズ、「せっかく病気になったんだから」というのが本当にいいなと思う。精神疾患は人生の踊り場、そこでひと息つくことがその人には必要で、必要なうちは治らない、環境を変えるなりしてその必要性がなくなった時に治っていくという考え方がやさしいな。

医学はすごい、プロをなめてはいけない!と思わせてくれる、難解なのになぜかすごくやさしい、いつもながらの語り口でメロメロになってしまった。疲れがとれるなあ。

 

 

 

おひとりさまの老後 上野千鶴子

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最近結婚したいのかしたくないのか自分でもよくわからない。結婚しない女の本といえば「負け犬の遠吠え」「おひとりさまの老後」かと思うが、どちらも未読なので図書館で借りてきた。

 

おひとりさまの老後は具体的なハウツー本なのかと期待していたのだが、あまりエビデンスのない上野先生の個人的なおしゃべりをえんえん聞かされる感じ、「圧」がすごい。特に前半はかなりお金のある女性でないと現実的ではないプランが多く、私が直接参考にするのは不可能そうだ。

しかしおひとりさまと言っても、私のように結婚していない人のほかに、結婚したけど離婚した人、死別した人、家族と縁が切れた人もたくさんいる、高齢者になると女は半分くらいおひとりさまになるのだというのはちょっとハッとした。結婚しないでこのままずっと1人でいたらそうとう目立つ少数派になってしまうのでは!?という不安があったのだが、生きてると半分くらいの人は死ぬときまでにまた1人になるんだと思うと気が楽だ。

私個人が結婚しないでずっと1人で、しかも病気と共存しながら生きていくにはどうしたらいいのかについてはまだ答えが出ていない。続いて負け犬の遠吠えも読んで考えたい。

江戸川乱歩傑作選 江戸川乱歩

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読書会課題図書。

怖い!単純にストーリーの気持ち悪さ、怖さがというより、「これを書いて人に見せている人」の怖さ、業の深さを感じてしまう。私は昆虫標本や剥製がめちゃくちゃ苦手なのですが、そういう、生き物の死んだ姿を美としてコレクションしている感じがかなりあり、嫌悪感がドバーッときてしまった。

 

どの話も人間の社会でうまくやることができなかった人間の話です。そしてその奇怪さ、おそろしさを「ほら、これは怖いでしょう、気持ち悪いでしょう、そしてそういうものを思いつき、おもしろく語れる私の手腕をみてください」と言いながら作者がどんどん出てくるな。その作者自身の暗さ、おそろしさ、プライドじたいが何より私は怖かった。でも作品としてはおしゃれで完成されているので、病んでいる姿が絵になるのはいいなあとは思う。

 

特に最後におさめられた「芋虫」は、若松孝二キャタピラーの原案にもなっているんだけど、めちゃくちゃ後味が悪い。「戦争により大きな障害を負った男」というのはもう耽美主義とか変態性欲とかでは片付けられない範疇だという気がしてしまうんだよな。並べて楽しむ楽しいコレクションとするには倫理にもとる、とつい思ってしまう悲しい読書だった。