江戸川乱歩傑作選 江戸川乱歩

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読書会課題図書。

怖い!単純にストーリーの気持ち悪さ、怖さがというより、「これを書いて人に見せている人」の怖さ、業の深さを感じてしまう。私は昆虫標本や剥製がめちゃくちゃ苦手なのですが、そういう、生き物の死んだ姿を美としてコレクションしている感じがかなりあり、嫌悪感がドバーッときてしまった。

 

どの話も人間の社会でうまくやることができなかった人間の話です。そしてその奇怪さ、おそろしさを「ほら、これは怖いでしょう、気持ち悪いでしょう、そしてそういうものを思いつき、おもしろく語れる私の手腕をみてください」と言いながら作者がどんどん出てくるな。その作者自身の暗さ、おそろしさ、プライドじたいが何より私は怖かった。でも作品としてはおしゃれで完成されているので、病んでいる姿が絵になるのはいいなあとは思う。

 

特に最後におさめられた「芋虫」は、若松孝二キャタピラーの原案にもなっているんだけど、めちゃくちゃ後味が悪い。「戦争により大きな障害を負った男」というのはもう耽美主義とか変態性欲とかでは片付けられない範疇だという気がしてしまうんだよな。並べて楽しむ楽しいコレクションとするには倫理にもとる、とつい思ってしまう悲しい読書だった。

ポロポロ 田中小実昌

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読書会課題図書。全然知らない作家だが、ページ数も少ないし、優しい口調の戦争語りエッセイみたいな感じかと気楽に読み始めるが、ずいぶん厳しく難しい本であるとわかる。

これは人間の記憶とはなにかということについての本です。人間の体験と記憶と物語、体験を記憶として思い出した時にはすでに違うものになっていること、さらに記憶を言葉にして語った瞬間にもっと異なる物語になってしまうこと、について相当自覚したうえで書かれている。体験そのものを言葉としてあらわすにはどうしたらいいのか?言葉にしてもそのまま自分の経験を変質させずに人にさしだせないのか?ということを追求した、エッセイ以前の、物語になることを徹底的に拒否した原始の言葉の群れ。

冒頭の「ポロポロ」では、牧師だった父の教会に訪れる人々が言葉にならないものをつぶやいたり叫んだりするのを「ポロポロをやる」と表現してあるが、この本に収められた作品たちも、なんとも表現しようがない、まさしく「ポロポロ」そのものだ。

私はインターネットが大好きでSNSばっかりやっている、日頃なんでも自分の行いや思ったこと、考えたこと、思い出などを言葉にして書いてしまうのですが、体験や思いを言葉にしてストーリーとして語ってしまうことにここまで潔癖になって書いてある本があることにめちゃくちゃ衝撃を受け反省した。言葉の暴力性、なにかを文章にして書いて人に見せることの暴力性については最近ずっと考えているけどまだまだ修行が足りない。

ばかもの 絲山秋子

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読むのは3回目くらい。好きなのに間違って売ってしまい買い直した。

絲山さんはとにかく文章がよくてずっと読んでしまう。歯切れいいかっこいい文章。なにがどう良いかわからんよさのある小説なんだけど、ふつうの人の、ふつうの絶望と破滅がふつうに書いてあって、それがいいなあと思います。失恋もアルコールも田舎の閉塞感も正直それだけじゃよくありそうな人生の問題であんまり華はないと思うんだけど、丁寧に書かれると輝く。

二村ヒトシのなぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのかという本を何度も何度も読んでいる。その中で恋は相手が自分を変えてくれるかもしれない、今いるところから連れ出してくれるかもしれないと思った時に落ちてしまう、うまく自分を受容できるようになると自分や相手を変えようみたいなのがない愛の関係になれると説かれている。ばかもののヒデはずっと自分を誰かに変えてほしいと思い続けていて(それが「想像上の人物」の到来を待つという幻想の意味なんだと思う)、そういう甘えた恋の相手全員に捨てられる。10年後、すべて失くして、それでも昨日別れた恋人のように自分を受け入れてくれる額子と再会し、ようやく愛にたどり着く。そういう自己受容の道のりの物語なんだなと思った。

個人的に10年とか何十年とかの単位で同じ人を追いかけていく物語が好きで、そういう博物展示とか文学館の資料とか見ても泣きそうになってしまう。そんな風に誰かの人生を見続けることは本当は家族や友人にしか許されないこと、そういう見続ける姿勢こそが愛だなと思うからです。そういう意味ですごくいい愛の小説を読んだ。

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読書好き、メガネ好きなかたにおすすめです。めちゃくちゃ使いづらい。買ってね。

 

職務履歴書(病弱)

新しい職場での就業3日目を控えて早めに入った布団の中で書いている。いま転機のまっただなかにいる。

 

私は主にバイオ関係の実験業務を行う派遣社員だ。30代だし、給料は正直かなり厳しいし、友人知人がみな結構ばりばり働いてる中でのハケンは気がひける。それでもこれは私の精一杯の努力の末に手に入れた、ようやく掴んだ、私の仕事だ。

 

19歳の時にうつ病の診断を受けた。以来治療を続けて持病とつきあっている。大学はなんとか卒業したものの、大学院進学を体調悪化を理由に断念したため、とりあえず身ひとつで地元に帰ることになる。進学予定だったのでシューカツはしていないし、そもそも体調は安定しないままで、とても長時間働ける状態ではなかった。

それでもなんとか働きたいと地元の百貨店のコーヒーショップのバイトで体力をつけながら、今住む街のバイオ実験のアルバイトの仕事を見つけて応募したのが2010年の夏。

大学時代の専門を活かした仕事がしたい、自分のこのままならぬ体でも挑戦してみたい、そのための最初の一歩だった。

 

初めて暮らす街で初めて着任した大学での仕事は楽しく、やりがいもあり、自分にもできる仕事があるんだという大きな自信をくれた。それでもアルバイトなので生活はカツカツ、うつも突然急激に悪化し頻繁に病欠したりと不安定。結局3年で退職することになる。

2013年からはまた別の研究施設でアルバイトとして働いた。ここではかなり大きなプロジェクトが動いていて、世界最先端の研究が毎日バンバン進む。そんな中で大きな転機になったのはSTAP細胞事件だった。こんな不正か起こる科学の世界でこれからもやっていくのか、自分の仕事に意味があるのかバイトながらもめちゃくちゃ悩み、結局うつもかなり悪化してしまい、療養のために退職。

その後は科学分野から離れ、しばらくリハビリを兼ねて知人のカフェで働いた。いくつかアルバイトを経て体力と精神力を養い、いよいよ念願のフルタイムでの勤務も夢ではなくなるところまで来た。

強いからだを得てどうしようか。なんの仕事をしてなにを目指そうか。結局、やりたいこと、やれることは今までの実験の仕事しかないと腹を決め、バイオ実験の派遣社員になった。

 

うつ病患者の就労はかなり大変だとほかの患者さんからも聞く。同じ病院に通う患者仲間でも、みなアルバイト以外は難しいし、仕事しても体調悪化で辞めるのを繰り返す人も多い。私たちに仕事は無理なんだろうか、働きたいなんて贅沢なんだろうかと思うこともある。働く理由は自己実現とか社会参加とかもあるけれど、それ以前にお金がなくて困るという現実的な問題がある。うつ以外でも病気や障害のある人たちってどう働いているんだろう。みんなの働き方を知りたい。

 

昨日が派遣先への初めての出社日、いきなり8時間みっちり働いて今日もベロベロだけど、元気だ。最初にこの仕事を志してから8年、ようやく今フルタイム仕事生活がはじまろうとしている。これから体がもつのか、業務をこなしていけるか、不安はつきないけれど、でも、やれるだけやってみようと思う。

 

#わたしの転機

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なnD 06

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友人が寄稿しているため購入。神戸の1003にて。なんの本なのかも把握せず買ったが、読んでみてもなんの本と言っていいのかはわからない。twitterを眺めているような感じだった。zine楽しいな。

平民金子さんのインタビュー、金子さんよりもインタビュアーの壇上さんにえらく共感してしまい、俄然そっち側で読んでしまった。30代、特にこれといった才能がなく、何者にもなれなかった人間はどう生きていけばいいのか?何かを作る側、表現する側になりたいけどなれなかった場合どうすればいいのか?そんなことに悩んでいる場合じゃなく仕事や結婚や子育てをするべきなのでは?

金子さんは何かを表現してるとかいう表層とは関係ない、自分の芯の部分を信頼しろと答えているが、難しいなと思う。なんでもいいのでこの壇上さんという人の表現活動がうまいこといって欲しいなあと勝手に思った。

1003   https://1003books.tumblr.com/