ばかもの 絲山秋子

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読むのは3回目くらい。好きなのに間違って売ってしまい買い直した。

絲山さんはとにかく文章がよくてずっと読んでしまう。歯切れいいかっこいい文章。なにがどう良いかわからんよさのある小説なんだけど、ふつうの人の、ふつうの絶望と破滅がふつうに書いてあって、それがいいなあと思います。失恋もアルコールも田舎の閉塞感も正直それだけじゃよくありそうな人生の問題であんまり華はないと思うんだけど、丁寧に書かれると輝く。

二村ヒトシのなぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのかという本を何度も何度も読んでいる。その中で恋は相手が自分を変えてくれるかもしれない、今いるところから連れ出してくれるかもしれないと思った時に落ちてしまう、うまく自分を受容できるようになると自分や相手を変えようみたいなのがない愛の関係になれると説かれている。ばかもののヒデはずっと自分を誰かに変えてほしいと思い続けていて(それが「想像上の人物」の到来を待つという幻想の意味なんだと思う)、そういう甘えた恋の相手全員に捨てられる。10年後、すべて失くして、それでも昨日別れた恋人のように自分を受け入れてくれる額子と再会し、ようやく愛にたどり着く。そういう自己受容の道のりの物語なんだなと思った。

個人的に10年とか何十年とかの単位で同じ人を追いかけていく物語が好きで、そういう博物展示とか文学館の資料とか見ても泣きそうになってしまう。そんな風に誰かの人生を見続けることは本当は家族や友人にしか許されないこと、そういう見続ける姿勢こそが愛だなと思うからです。そういう意味ですごくいい愛の小説を読んだ。