ポロポロ 田中小実昌

f:id:mori_shi:20180502151429j:image

読書会課題図書。全然知らない作家だが、ページ数も少ないし、優しい口調の戦争語りエッセイみたいな感じかと気楽に読み始めるが、ずいぶん厳しく難しい本であるとわかる。

これは人間の記憶とはなにかということについての本です。人間の体験と記憶と物語、体験を記憶として思い出した時にはすでに違うものになっていること、さらに記憶を言葉にして語った瞬間にもっと異なる物語になってしまうこと、について相当自覚したうえで書かれている。体験そのものを言葉としてあらわすにはどうしたらいいのか?言葉にしてもそのまま自分の経験を変質させずに人にさしだせないのか?ということを追求した、エッセイ以前の、物語になることを徹底的に拒否した原始の言葉の群れ。

冒頭の「ポロポロ」では、牧師だった父の教会に訪れる人々が言葉にならないものをつぶやいたり叫んだりするのを「ポロポロをやる」と表現してあるが、この本に収められた作品たちも、なんとも表現しようがない、まさしく「ポロポロ」そのものだ。

私はインターネットが大好きでSNSばっかりやっている、日頃なんでも自分の行いや思ったこと、考えたこと、思い出などを言葉にして書いてしまうのですが、体験や思いを言葉にしてストーリーとして語ってしまうことにここまで潔癖になって書いてある本があることにめちゃくちゃ衝撃を受け反省した。言葉の暴力性、なにかを文章にして書いて人に見せることの暴力性については最近ずっと考えているけどまだまだ修行が足りない。