「思春期を考える」ことについて 中井久夫

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私の読書テーマに「障害や病気を抱えたまま生きていくにはどうすればいいか」というのがあり、特に精神医学分野が好きだ。一般向けの病気の解説本、患者向けの本、手に入れば専門家向けの教科書、患者の体験談、医師のエッセイなどいろいろ読む。推し精神科医野村総一郎斎藤環、そして中井久夫です。

 

中井久夫は「こんなとき私はどうしてきたか」がとにかく名著なのですが(ケアをひらくシリーズは最高!!!!!)、それで独特の文体と世界観に参ってしまい、以来ちくま学芸文庫中井久夫コレクションを少しずつ読んでいる。

こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)

こんなとき私はどうしてきたか (シリーズ ケアをひらく)

 

中井久夫コレクションはだいたいどれもタイトルとあまり関連性はなくて、「思春期を考えること」について では思春期の話から始まって、サラリーマン労働と精神疾患の話、軽症うつ、海外と日本の精神科医療の比較の話、統合失調症論などにうつり、最終的には精神科医の個人史の話になっています。公演や寄稿の集まりなのでわりと散漫だし、最後の方は専門的すぎてまったくなにもわからない。

ただところどころにハッとすることばがスッといれこまれてあり、12歳くらいまでは身体のことばがある(ストレスでぜんそくとか)のに13〜15歳くらいはそれもなくて、でもまだ自分の感じてることの言語化もできないから妄想すら出ない空白の歳であるとか、精神科に限っては治療の期間を自由に短縮できると思われがちだがそんなことはなくて骨折などと同じように一定の時間がかかるとか、患者は非常に細かい診察の様子を覚えていてささいな一言をこちらが恥ずかしくなるほど感謝されることがあるとか、なるほどな〜〜〜!!と実感をもって読んだ。

 

中井久夫のキラーフレーズ、「せっかく病気になったんだから」というのが本当にいいなと思う。精神疾患は人生の踊り場、そこでひと息つくことがその人には必要で、必要なうちは治らない、環境を変えるなりしてその必要性がなくなった時に治っていくという考え方がやさしいな。

医学はすごい、プロをなめてはいけない!と思わせてくれる、難解なのになぜかすごくやさしい、いつもながらの語り口でメロメロになってしまった。疲れがとれるなあ。